まぼろしの都のインカたち
突然ですが児童書をご紹介します。
南米インカ帝国の歴史を扱った小説です。
スペインから来たピサロによってインカ皇帝アタワルパが処刑された後、
クスコ奪還とインカ帝国の再興をもくろむインカ戦士たちの物語。
峻険な山々に守られたビルカバンバの都が主な舞台です。
インカ族についてほとんど知識がなかったのですが、児童書と言うこともありとても読みやすかったです。
南米大陸を席巻するスペイン語圏の文化と、滅びていくインカ文明のせめぎあいが
ティトウ・クシの様子などから伝わってきました。
クスコを取り戻したい、インカ帝国を再建したいと言う思いを持っていても、
帝国の人すべてがそういった思いを抱けるわけではないと言う現実も描写されていたのが興味深かったです。
そんななかで、最後の皇帝となったトパック・アマルーが自身の処刑の前に泣き叫ぶ人々を宥める場面は印象が強かった。
インカ人としての認識が薄れ、スペイン語やスペイン文化を受け入れていても、
皇帝の挙動一つが心の奥に響くことがあるんだなと。
もっとインカ帝国について知ってみたいと思わせる一冊でした。
南米というと、ブラジルやアルゼンチンのサッカー選手の活躍くらいしか知識がありません。
あとは、ウユニ塩湖やマチュピチュ、ナスカの地上絵といった絶景シリーズ。
学生時代に地理の授業で白人と他人種の分布を覚えたりもしましたが、あまり思い出せない…。
ナショナルジオグラフィックで、熱帯雨林に住む土着の部族の特集を見たことはありますが、それくらい。
スペインからコンキスタドールが侵攻してから、現在の姿に至るまでをちゃんと勉強したいです。
スペイン語を勉強していますので特に。
ただ、スペイン人が中南米で何をやらかしたか勉強したら、スペインのことが嫌いになるリスクは高いと思います。笑
この小説の前作では、皇帝アタワルパが処刑されるまでの過程を描いているのですが、アタワルパが処刑された罪状がとにかく酷かったです。
何も罪を問われるようなことはしていなかったのに、キリスト教徒を迫害したかのような言いがかりをつけ、処刑しています。
インカ帝国の人々は、小説の中でとても情に厚く穏やかな人々として描かれています。
もし本当にこのような文化的性格を持つ人々だったとしたら、取りいったり騙したりして彼らの資源を横取りすることは、とても簡単なことだったでしょう。
複雑な歴史を持つ南米の歴史探求の入り口として、ぜひお勧めしたい一冊です。